「スターバースト」はガス雲の衝突が引き起こす 南天の巨大星団NGC 3603他で解明

【発表日】2013/03/19 
【掲載メディア】 中日新聞、読売新聞、毎日新聞(夕刊)

名古屋大学大学院理学研究科附属南半球宇宙観測研究センター 
【会見者】 福井康雄 名古屋大学大学院理学研究科教授 南半球宇宙観測研究センター センター長

宇宙には爆発的に星形成を起こしている銀河がある。このような現象はスターバーストと呼ばれ、その起源は謎が多い。我々の銀河系にもいくつか類似の爆発的星形成が見られる。この内、NGC 3603 をはじめとする4 領域の星形成が 2 個のガス雲同士の衝突によって引き起こされていることが、今回、南米チリからの観測でわかった。遠方銀河のスターバーストの起源に迫る、貴重な成果である。本研究は、3月20日から開かれる日本天文学会で報告される。

宇宙は銀河で構成され、銀河の星形成が宇宙進化を決定づける。特に、短時間に星が爆発的に形成される事例は、スターバーストと呼ばれるが、その大部分は遠方にあるため詳しく観測できず、スターバーストの仕組みは謎に包まれていた。スターバーストは銀河全体にも大きな影響を与え、宇宙進化の鍵を握る重要な過程の一つである。

本研究では、銀河系内の数少ないスターバーストを示す巨大星団の一つ NGC 3603 他 3 領域( ウエスタールンド 2 、RCW38 、[DBS2003]179) に注目し、徹底した分子雲の観測を行った。観測には南米チリ、アタカマ高地(標高5000メートル) に設置したNANTEN2 望遠鏡を用い、一酸化炭素分子の出す電波を観測した。その結果、 4 領域全てで 2 個の分子雲が毎秒 20キロメートル の速度で互いに衝突し、その衝突面で、稀に見る100 太陽質量程度の巨大星 数十個が、一気に190 万年で形成されていることを見いだした。それぞれの分子雲の質量は 10 万太陽質量である。スターバーストの起源を克明にとらえた初めての成果であり、今後の研究推進に大きく役立つと期待される。

今回観測した巨大星団は、いずれも1 万個以上の星を含む、銀河系内最大級の星形成領域である。年齢300 万年以下の若い巨大星団は全部で 4 個知られており、その全てで分子雲同士の衝突がとらえられた点が意義深い。衝突がスターバーストの必要条件であることが、強く証拠づけられた点で注目される。

遠方宇宙では互いに衝突する銀河が多く見いだされており、宇宙における衝突の頻度は少なくない。このような衝突がスターバーストの引き金となりうることを詳細に明らかにした本成果は、今後の観測・理論研究の方向性に強く影響を与えるであろう。

【PDFファイル】プレスリリース

掲載情報の抜粋

3月20日 中日新聞 「『巨星集団』こうして誕生 水素ガスの塊同士が衝突」
3月20日 読売新聞 「ガス雲衝突で多数の星誕生 名大グループ解明」
3月29日 毎日新聞(夕刊) 「星団 ガス雲衝突で誕生 名大教授ら初解明 狭い空間に数万個の星」