おうし座暗黒星雲の一酸化炭素分子スペクトルの観測

おうし座暗黒星雲は、太陽系からおよそ140パーセク(約450光年)の距離にある我々に最も近い星間分子雲の一つです。 ここでは100個程の星がうまれていて、現在でも星が活発にうまれていると考えられています。


▲図1.おうし座の13CO分子スペクトル強度分布

図1は、4メートル電波望遠鏡で観測したおうし座暗黒星雲の方向の13CO分子スペクトルの電波強度図です。 青から赤になるにつれてその方向からの電波が強い(分子がたくさんある)ことを示しています。この領域全体でおよそ太陽の7000倍の質量のガスがあり、ガスは平均で1立方センチメートルあたり1000個程の分子からできています。 図中の丸印は、赤色が赤外線天文衛星IRASのデータで、うまれたばかりの星があることを示しています。 黄色は光や赤外線で見えるTタウリ星と呼ばれる核融合が始まる前の段階の若い星です。 これからガスの濃いところで星がうまれているのがわかると思います。


▲図2.HCL2のC18O分子スペクトル強度分布

図2は、図1の左上のHCL2と呼ばれている領域のC18O分子スペクトルの分布です。 C18Oスペクトルは13COよりも分子雲の奥まで見通せる分子です。 これにより分子雲の濃いところの構造がより明らかになります。このように分子雲全体からより濃いところを探していきC18Oスペクトルよりも分子雲の濃いところを見通せるH13CO+分子スペクトルで、4メートル鏡よりも分解能の高い(細かく見える)野辺山の45メートル電波望遠鏡を使って観測した結果、私たちは星がうまれる前の段階である星の「たまご」を発見しました(図3)。


▲図3.左図がおうし座の中で見つかった星の「たまご」、右図が星の「赤ちゃん」。

右図には赤外線で見えるうまれたばかりの星(十字印)があるけれど、左図にはそれがありません。また左図の分子雲の濃いところ(分子雲コア)は、右図よりも広がっています。星は、左図のような星の「たまご」が、自分たちの重力によってちじんでガスがさらに集まり、その中でうまれると考えられます。