『宇宙100の謎』文庫化にあたって(2012年1月)
2012年1月度のビデオメッセージ
皆さん、あけましておめでとうございます。本年もどうかよろしくお願いいたします。ことし最初のメッセージをお伝えしたいと思います。
何年か前から「宇宙100の謎」という、キャンペーンといいますか、運動を行ってまいりまして、それを3年ほど前に本にまとめました。大変多くの方に読んでいただきまして、いろいろな反響を聞かせてもらえています。
この「宇宙100の謎」は、いろいろな方々、決して宇宙の専門家ではない、また日頃から宇宙に強く興味があるわけではない、そのような本当に一般の方々から、宇宙について知りたいと思っていること、あるいは常日頃、感じている疑問を寄せていただき、それに対してできるだけわかりやすく回答をするという企画でした。その「宇宙100の謎」を進めながら、ぜひ基礎科学に対する理解者、また基礎科学の話を聞いてくださる方々のすそ野を広げていくことを一つの目標に取り組んできました。
すでに「何とかの謎」という本はたくさん出ておりますが、そのほとんどは研究者が、あるいは専門家が答えたい疑問を中心に構成されており、発問される方は決して一般の方ではありません。
この『宇宙100の謎』を書いてみて、いろいろな発見がありました。専門家と一般の社会の方々との間の理解のギャップは非常に大きいのです。それに対して、さらにわかりやすい言葉で、いろいろな問題に対して答えていくということは、なかなか骨の折れることです。
いくつか代表的な質問を思い起こしてみますと、例えば「宇宙の色はどんな色ですか?」という問いかけがありました。我々も興味を持って調べてみますと、結局、宇宙の色は「宇宙で光っている星々の、あるいは銀河の色をすべて合成すると、どんな色にみえるのか?」という問題に焼き直すことができるわけですが、答えは「ベージュ」です。太陽のような星、それよりも少し温度の高い星、いろいろな星の光を、宇宙にある割合ですべて混ぜ合わせるとベージュになるという計算になりました。
それ以外にもいろいろな謎があります。例えば「地球はどうして回っているのか?」「月はどうやってできたのだろう?」、もちろん「宇宙の起源はどうなっているのか?」「宇宙の果てはどうなっているのか?」「宇宙はこれから将来、100億年後、1000億年後にどうなっていくのか?」などがあり、私達人間を取り巻く自然に対する、それを含む宇宙に対するたくさんの謎は、実は専門家にとっても永遠の謎を多く含んでいます。
昨年末、12月の後半ですが、角川文庫から『宇宙100の謎』の文庫版も発刊されました。そして年明け早々、1月、間もなく『宇宙100の謎』の第2弾も出版される予定であります。ぜひ多くの方々にお読みいただき、いろいろな反響を聞かせていただきたいと思います。そのなかから社会における宇宙の意味、専門家である天文学者の果たすべき役割について、さらに思いを巡らし、掘り下げていきたいと考えている年頭です。
どうもありがとうございました。