ALMA望遠鏡(2012年11月)
2012年11月度のビデオメッセージ
今月のメッセージをお伝えしたいと思います。
先月は1週間ほど、チリのサンティアゴにALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)望遠鏡の2基目の観測の観測提案を審査する国際会議に出ていました。全部で70名近い研究者が世界各地から集まり、いくつかのコミッティに分かれて、丸3日か4日ぐらい、一つの委員会当たり90件程度のプロポーザルに目を通して、その評価をしていくという作業を行いました。なかなか勉強になります。世界中の人達が大変知恵を絞って、何とかALMA望遠鏡の観測時間をもらおうと頑張っています。もちろん、日本からもたくさんのプロポーザルが出されています。
そのような委員会の席では、いろいろな議論を行うわけですが、やはり一つ印象的なことは、ヨーロッパの伝統といいますか、文化といいますか、あるいは強かさといいますか、そのようなものが非常に強く感じられることです。アメリカはある意味、一つの国です。日本はさらに島国で、地理的に孤立しています。それに対してヨーロッパは地続きで、しかも数千年にわたって戦争、対立を繰り返し、それを日常として生きてきた人達です。そのような委員会でのいろいろな議論の場でも、ヨーロッパの人達の強かさは、本当に血となり汗となって息づいているということを感じます。アメリカの200年の伝統は、あるいは日本も国を開いて外国と渡り合うようになってから、まだ歴史が浅いということを感じます。
日本という国は、依然として世界的にみても特殊な、非常に手厚く守られた国です。しかも、切った張ったといいますか、日常的な対立、抗争から離れた、大変平和な国です。ときどき「何とかボケ」といわれますけれども、確かにこの地理的な環境、そして文化的な環境を乗り越えて、ヨーロッパのような強かさを国民として獲得することは、なかなか大変なことだと、あらためて実感します。
そして、皆さんのいろいろなお力添えもあり、おかげさまでALMA望遠鏡もだいぶ形をとってきました。来年の春から2基目の観測が始まりますが、3基目、4基目辺りになりますと、アンテナの数もフルに、60数台でのフルオペレーションという形になるはずです。そのような、ALMAから出てくる宇宙の新しい姿を、まもなく皆さんにお伝えしていける機会がどんどん出てくると思います。
来月になりますが、12月に名古屋および東京で「クリスマスレクチャー」と称した講演会を予定しております。そのような場で、ALMAも含めた最新の宇宙の研究成果をお伝えしたいと思っております。ホームページなどをみながら、ぜひ多くの方々にご参加いただければと思います。
ありがとうございました。