金環日食(2012年12月)
2012年12月度のビデオメッセージ
皆さん、こんにちは。今月のメッセージ、ことし最後のメッセージをお伝えしたいと思います。
最近、かなりの数のパブリックレクチャーを行っています。お客様は、それこそまだ小学校に上がっていないお子さんから高齢の方まで、大変幅が広いのです。そのような方々それぞれに楽しんでいただけるお話をするためには、なかなか知恵を使わなければいけません。ことしは金環日食がありましたので、最近の話は、まず自分がやった金環日食の観察の話から始めています。小さな望遠鏡で、手のひらに金環食を映しまして、それをまずみていただき、「月と地球を考えよう」というところから話を始めています。
40数億年前に、地球が誕生し、太陽が誕生し、月も生まれたわけですけれども、実は生まれたての月は地球のごく近くを回っていました。いまも月は地球からどんどん遠ざかっていますが、1年間にわずか4cmという非常に小さなスピードで、ゆっくり遠ざかっています。ただし、10億年、20億年経つと、それでも目にみえる変化があり、どんどん小さくなっていくわけです。ですから、月は昔どうみえていて、これからどうみえるのか、そのなかで金環日食がどのような位置にあるのかということは、なかなか面白い問題です。
整理すると、例えば生まれてから1億年、あるいは5000万年経った頃の月は、地球に非常に近かったために、太陽よりも圧倒的に大きくみえていました。10倍、20倍の大きさにみえていたはずですから、もしその頃、生命がいたら、大変巨大な月を間近でみていました。そのような時代が地球にはありました。
そして、実は金環食は、45、46億年を経た最近になって、ようやくみえるようになったはずです。つまり、例えば5億年前に金環食がみえたかというと、みえませんでした。なぜかというと、月はもう少し近くにいて、蝕のときには常に太陽をすっぽり覆っていたはずです。ごく最近、といっても例えば1億年前ですが、その辺りから金環食がみえるようになりました。そのような意味で、いま私達は実に絶妙なタイミングで地球に生きています。
これからさらに数億年を経ると、金環食はどんどんつまらなくなっていきます。いまの金環食は、非常に細くデリケートな太陽のリングが美しくみえていますが、これから数億年経ると、金環食が起きても、太陽の輪がどんどん太くなっていきますから、デリケートでなくなり、どんどんつまらなくなっていきます。そのような意味で、人類は何ともいえない絶妙なタイミングで、いまここに生を受けていると考えられます。
金環食というとても身近な現象から、遠く40数億年の太陽系の歴史、さらにこれからの行く末の50億年に思いをはせることができるというメッセージをお伝えしています。
ことし最後のメッセージとさせていただきます。ありがとうございました。