研究室30周年、「なんてん」15周年を迎えて(2010年9月)
2010年9月度のビデオメッセージ
皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。
ことし、2010年から遡ること30年、1980年のちょうどいま頃、8月、9月から、宇宙を電波で観測する名古屋大学の私達の研究グループがスタートしました。私が東京から赴任いたしまして、「宇宙を電波でみるという観測を名古屋大学でもスタートしようじゃないか」という議論が始まり、ただちに望遠鏡の設計、あるいは受信機の開発が始まりました。それから早くも30年が経ちました。
その間、ちょうど中間のポイントですが、15年前の1995年の10月に、2台目の口径4mの電波望遠鏡を南米のチリに移設いたしました。15年前ですから、1995年ですが、そのときに名古屋大学で望遠鏡の送別会を行いまして、100名ほどの方々に望遠鏡を見送っていただき、以来、15年近くにわたって南米、チリから宇宙の観測を続けてきたわけです。
当時、1990年前後ですが、実際に南半球で電波望遠鏡を使って宇宙を観測しようという計画を考えついたのは、実は1987年、いまから23年前です。そこから1995年の実際の望遠鏡のチリ設置に至るまで、約7年の月日を要しておりますが、実はこれは大変難しかったのです。当時、1990年前後には日本の観測装置が海外にある例はなく、「なんてん」という電波天文台は、我が国が初めて海外に作った電波望遠鏡だったのです。それ以来、私達はチリの地から宇宙をみ続けております。
いろいろな困難がありまして、例えば文部科学省においても前例がないということで事務方はなかなか動いてくれませんでした。そこを名古屋大学の総長、あるいは当時の事務局長の方々を中心に大変骨を折ってくださいました。また、私もいろいろなところで講演を行い、市民の方、あるいは一般企業の方々に協力を訴えました。日本ではまったく前例のないそうした営みのなかから、ようやく文部科学省から約1億円の移設費が出て、また1億円を超える寄付を一般市民、あるいは企業の方々からいただきました。そのような非常に熱い支援を受けて、この計画は今日まで進み、いまや世界でこの分野を明確にリードする、そのような宇宙の研究の一翼を私達は担っているというわけです。
いろいろな講演会活動等もやっております。あるいは書籍も出版しております。ぜひ一度、手にとって、あるいは聞きに来ていただいて、私達の研究がどのように進んできたのかということを、のぞいてみていただくのもいいのではないかと思います。ことし10月から11月にかけて、30周年を記念する、そして「なんてん」の15周年を記念する講演会等の催しをいくつか計画しております。ホームページをご覧になって、お時間がございましたらぜひ聞きに来ていただければと思います。
以上で今月のメッセージといたします。ありがとうございました。