新しい出会いに新しい発見(2009年3月)
2009年3月度のビデオメッセージ
皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。
日本という国は、島国であるということもありまして、海外になかなか情報を発信できない、しにくいという状況があります。研究者の世界も事情がまったく同じで、私達も日本の成果を海外にどのような方法で伝えていくかということを、日々、考えております。
ここ数年、3年ほど前から一つ新しい試みを行っております。大学院生を対象に、サマースクール、あるいはウィンタースクールという集中的な講義の場を作りました。このような講義は、例えばリゾート地のホテルなどを借りて行われます。いろいろな国から講師の人達を4~6人お招きして、お1人に3つか4つの講義をしていただくという仕組みです。それをだいたい1週間程度行います。募集に応じて、全国からさまざまな大学の大学院生の方々、あるいは若手の研究者の人達が聞きに来られます。そのようなことをきちんとサポートする予算上の仕組みもあります。
そのようなスクールを行いますと、思いがけない良い効果があるということが、最近、わかってきました。もちろん、英語でいろいろな分野の講義をしてもらう形式ですから、一つは英語を聞く練習になるということ、また英語で質問する場にもなるわけです。ですから、これから伸びていってほしい若手の人達に大変貴重な雰囲気、あるいは学ぶ場を提供しているといっていいと思います。
そして、それだけにとどまらず、招待されてレクチャーをされる方々以外にも、我々が短いコマで研究発表をしたり、最新の成果を報告したりということも織り混ぜています。そうしますと、日本の研究成果を深く伝える良い場になります。特に、普通、このようなスクールは大都市から離れた場所で、ほとんど外に出て行けないという状況で開催されますので、みんな結構、集中していまして、たっぷりと議論する時間もあり、海外の顕著な研究者の方に日本の成果を非常にしっかりと伝えることができるということがあります。
また、国内の若手の研究者がたくさん来ますので、そのような研究者の間で、例えば食事の時間やコーヒータイムに交流が深まっていくということがあります。さらに面白いと思いますのは、いろいろな国から来た講師の人達の間でも、それぞれ会話がはずむということです。一般に、普通の研究会では、トピックスを決めて、ある狭い分野の方々が50~100人集まります。そのような会合が大部分なのですが、このようなスクールに集まってレクチャーをする方々は、それぞれがいろいろな専門を持っています。そして、いろいろな専門を持った方々は、普段はほとんど出会いませんので、そのような方々が意見交換、あるいは新しいアイデアの交流をする場にもなっています。実際に聞いてみますと、例えば去年の夏に行われたサマースクールでは、その場にいた2人の講師の間でいろいろな議論がはずんで、ついに共同研究に発展しました。そのようなことも決して珍しくなかったという話です。
人間は、一つの場所で、あまり変わらない人達と会話するという毎日を送りがちですけれども、新しい人、新しい考え方と出会い、違う考え方がぶつかり合うことによって、思いがけない新しい発見、そして発展があるということを、このようなスクールの開催を通して、あらためて深く感じているきょうこの頃です。
皆さん、どうもありがとうございました。