ブラックホールの巨大ジェットを発見(2009年4月)

2009年4月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

今月は宇宙における新しい発見の問題についてお話ししようと思います。

科学者、研究者は、大変な努力をして自然に対する理解、あるいは宇宙像を作り上げてきました。それ自体は大変壮大で、実によく考えられた、よく検討されたものなのです。ところが、新しい観測技術が出てまいりますと、そのようないままでのパラダイム、枠組みが、ガラガラと音を立てて壊れていくということがあります。

私達は先頃、ブラックホールが出す巨大なジェットが宇宙空間に刻み付けた螺旋状の構造を9個発見し、先月、その発表をいたしますと、大変な反響がありました。ただし、反響には2種類あります。そのような発見の意義を直ちに理解して、今後の研究の方向を切り替えていけるタイプの方と、一方、これは偉い研究者の中にももちろんおられますが、いままでのパラダイムにしがみつき、新しい発見を受け入れることができないタイプの方がいらっしゃいます。

特にセンセーショナルな新しい発見をいたしますと、必ず天文学者の間で一つの大きな論争が巻き起こります。論争を続け、いろいろな角度から新しい観測事実を検証していき、ほかに別の解釈の仕方はないのか、2年、3年、喧々諤々の議論をいたします。そのよう議論を経て、新しい発見の意義が広く伝えられ、理解されていくということがあるようです。

もちろん、そのような大事件の数はそれほど多くはないわけですが、今回の私達のジェットの発見はある意味で非常に画期的な発見であり、いままでみえていなかったブラックホールの非常に活動的な現象を量的に押さえることのできる極めて斬新な手法なのです。これから2、3年かけて、9個という観測例を100個のレベルまで増やしていけるのではないかと、私は密かに考えております。2、3年後、天文学の、特にブラックホールのジェットに関する理解がどのように塗り替えられていくのかを楽しみに見守っていきたいと考えております。

どうもありがとうございました。

【キーワード】 研究・観測