日食という偶然(2009年8月)

2009年8月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

先日、日食がありました。皆さん方、日本全土で欠けた太陽の姿をご覧になったのではないかと思います。天気はそれほど良くなかったのですが、雲を通して非常にきれいに欠けた太陽の姿を目にされ、特に初めてみる子供達などは本当に宇宙を感じたのではないかと思います。

日食は、太陽が月の背後に隠されることによって欠けてしまう現象ですが、いろいろ考えてみると不思議なことが少なくないのです。例えば太陽の大きさが1cmぐらいに縮小したと考えてみましょう。そうしますと、地球の大きさは1mmもなくて、わずか0.1mmです。1cmの太陽から約1mの距離に0.1mmの地球があり、その周りを地球のさらに4分の1の大きさの月が回っている、そのような条件になっています。この小さな小さな月が、偶然、太陽と地球を結ぶ直線の上に並ぶ、そのような現象が日食を引き起こします。

そして、日食のときの影をみますと、みかけ上、太陽と月の大きさはほとんど同じになりますが、これは偶然です。ちょうどそのような時期に私達が生きているということなのです。月は形成された当初、いまの軌道よりもずっと地球に近い位置にありました。それがある理由でどんどん遠ざかり、約45~46億年かけて、いまの位置まで月は遠ざかってしまったのです。それで、大きさとしてはそれこそ400倍違う太陽と月が、地球からみると、たまたまほとんど同じ大きさにみえているわけです。これが皆既日食という実に特異な現象を可能にしています。

太陽や月などの天体の大きさがどのように決まっているのか、そしてまた地球の軌道、月の軌道がどのように決まっているのかということを考え始めた小学生や中学生の方もいるのではないかと思います。実に不思議な、神秘に満ちた40数億年の太陽系の進化に思いを馳せたくなります。

最近の研究で、実は地球と同じような重さを持った地球型惑星が太陽系の外でどんどんみつかり始めています。地球とほとんど同じ質量の惑星が数十個みつかるのもおそらく時間の問題で、数年のうちにそのような時代が来るのではないかと考えられています。太陽系の起源はまだまだ解明されておらず、謎が多いのですが、実に素晴らしい人間の力で一歩一歩、その謎の解明に向かって進んでいる、そんな現代でございます。

ありがとうございました。

【キーワード】 天体