食事は人生の基本である。(2009年12月)
2009年12月度のビデオメッセージ
皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。
去年、『なんてんに星を追って。』という本を出しました。これはある新聞に半年ほどコラムを連載いたしまして、その記事を一冊にまとめた本です。
きょうは、そのなかから「玉ねぎを炒める」というタイトルを付けた文章の最初の一節だけを読ませていただきます。「食事は人生の基本である。毎日の食事をしっかり食べていない人に良い人生が待っているとは思われない」と書き出しました。
きょうは少し方向を変えて、食事のお話をしたいと思います。ここに書きましたように、毎日の食事は人間という生物の基盤を支える、極めて本質的で重要な営みなのです。ですから、食事を疎かにしてはいけないと思いますが、現代の社会のなかで時間的な問題等によって食事あるいは食べるという人間の基本がどんどん疎かになっているということを、私はかなり危機感をもってみております。おいしいものをしっかり食べるということから、しっかりとした人生、そして人生の楽しみが生まれてくるのではないかと信じております。
さて、きょうは料理のレシピを一つご紹介しようと思います。これは私の全くの自己流ですが、トマトのパスタをときどき作ります。
材料は、イタリアントマトを5つ、6つ、湯むきして潰してペースト状にしたもの、あるいは缶詰でしたらこれぐらいのものを1個用意していただければいいと思います。固まりがあれば手でしっかり潰しておきます。それから、良いオリーブオイル、アンチョビ、さらに黒オリーブを10個ぐらい、ケッパーを大さじ1、2杯、それぐらいです。
まず、パンにオリーブオイルを入れまして、ニンニクを数片、弱火で炒め、しっかりとニンニクの風味をオリーブオイルにつけます。最後のほうで鷹の爪を半かけぐらい入れて、少し辛味をつけておきます。ここでいったんお鍋を冷ましまして、そこに用意してあったトマトを入れます。あとは、順番はどうでもいいのですが、薄切りにした黒オリーブとケッパーを入れまして、もし酸味がお好きであれば、お好みでケッパーのビネガーを少し足してもいいかもしれません。これをだいたい15~20分ぐらい、弱火でことこと煮詰めていきます。
そろそろできそうだというときに、パスタを2人分、150gぐらい、適当な硬さ、アルデンテに茹でます。それをソースと絡めて、お皿に盛り分けます。そのようなパスタです。
これはアンチョビがとても大事です。瓶詰めの非常に質の良いアンチョビのフィレをぜひ使っていただきたいと思います。ヨーロッパ、特にイタリアなどの家庭では、このようなパスタを楽しんでいます。
日本のパスタの楽しみはそこで終わることがほとんどだと思いますが、実はヨーロッパ、イタリア等ではさらにその後の楽しみがあります。日本では皆さん、ワインを楽しまれますが、ヨーロッパではその先に食後のリキュールを楽しむという習慣が行き渡っています。私が好きなリキュールの一つにハンガリー特産のウニクムというお酒があります。例えばモーゼルのような良いクリスタルのガラスの小さな器にウニクムを少し注ぎ、これは黒いリキュールなのですが、それをゆっくりと口の中、舌で食後の余韻を楽しみます。これがヨーロッパの食事全体の楽しみを形成していると感じております。ワインももちろん大変楽しいものなのですが、食後のリキュールの楽しみも試してみられてはいかがかと思います。
きょうはこの辺りで。ありがとうございました。