太陽はなぜ燃えているのか?(2008年8月)

2008年8月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

今月、8月は夏休みの時期で、子供達を集めていろいろと宇宙のお話をする機会が多い時期でございます。実はこの撮影の直前まで、30組ぐらいのお父さん、お母さんと子供達に来ていただいて、宇宙をテーマにしたサイエンスカフェを行っていました。子供達からはなかなかシャープな、非常に良い質問がどんどん出てきまして、例えば、「太陽はなぜ燃えているのか?」という質問がありました。大人でも「太陽はなぜ燃えているのか?」という問題に正確に答えることはなかなかできません。

そして、そのルーツといいますか、問題の根源を探っていきますと、大変基本的な物理学の基礎に行き当たることがわかります。

一つは、太陽の表面の温度は6000度なのですが、中身も含め、太陽全体の温度の平均を調べていくと100万度程度になります。さらに中心のほうは1000万度を超えているのですが、実は1000万度を超える高温であるがゆえに、水素がヘリウムに変わるという核反応が可能になっています。この水素がヘリウムに変わる核反応がもとになって、太陽の表面を6000度という高温に保つことができるわけです。

さらに、中心が1000万度という温度になっている原因をどんどん探っていきますと、これはやはり重力が関係しています。万有引力があらゆるものを押しつけ、引きつけ合っています。その結果、太陽の中心は非常に高い圧力になっています。圧力が高いということはガスの運動が激しいということで、運動が激しいということは温度が非常に高いということにつながります。つまり、太陽の中心が1000万度を超える高い温度になっているのは、もとをただせば実は万有引力が原因であることがわかってきます。

さらに、水素がヘリウムに変わる反応が起きると申し上げましたけれども、このことが太陽の寿命を決めています。1000万度を超えて核反応を起こし得る太陽の中心部では、100億年ぐらいで水素をすべて消費してしまいます。水素が全部、ヘリウムになってしまうのですね。ですから、水素がどれぐらい存在しているかということから、太陽の寿命はほぼ100億年であり、すでにその半分の40数億年を償還してしまっているということもわかってまいります。つまり、太陽系の余命はあと50数億年ということになります。

このように、子供の発する非常に素朴な、しかし非常に根源的な疑問にしっかりと答えていくことは、物理学の基本をしっかりと見つめ直すことにつながっていくわけですね。大変興味深いことだと思います。

どうもありがとうございました。

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