宇宙の96%がダークマター(2007年3月)
2007年3月度のビデオメッセージ
3月になりました。今月のご挨拶を申し上げたいと思います。
きょうは、宇宙研究の本当の最前線にある、とても高い壁についてお話ししたいと思います。その壁のことを我々は「暗黒物質」あるいは「ダークマター」と呼んでいます。宇宙には光を放ったり、電波を放ったりして観測できる物質と、そうではない、現在、我々がまったく検知することのできない物質の両方があるということが、最近の観測でますます確かになってきました。
すでに30年、40年前から「みえない暗黒物質があるのではないか」ということは、いろいろな観測から囁かれてはいました。そして21世紀になり、いろいろな観測がダークマター、暗黒物質が間違いなく存在するということを非常に明確に指し示す時代になってきました。それに投入されてきた宇宙研究のエネルギーは本当に凄まじいものがあると思います。
我々人類は、いかにも宇宙を知っている、あるいは理解できているかのような錯覚を持っている気がするのですが、決してそうではありません。いまこの時代、科学と技術をかなりコントロールできているように思っていらっしゃるとすれば、それはもうとんでもない間違いなのです。宇宙の96%が、私達がまだまったく理解できていない暗黒物質とエネルギーによって満たされているわけです。
いまからさらに10年、20年後、研究によってダークマターの一部あるいは片鱗がみえてくる時代が、おそらく必ず来ると思います。ですから、私達研究者は、日々、本当に私達はものを知らない、いつ何が発見されるかわからない、そのような興奮に満ちた日々を過ごしているわけです。
今月のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。