今世紀最大級のニュースに拍手(2016年3月)

2016年3月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

何といっても、ことしに入って最大のニュース、そしておそらく100年に1つあるかないかという大ニュースが飛び込んできました。それがLIGO(Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)による重力波の直接検出です。

私は観測結果をみて本当に驚きました。素晴らしく美しいデータなのです。グループの解釈ですけれども、昨年9月の実験、観測で、13億光年ぐらいの距離にある、だいたい太陽の30倍の重さの2個のブラックホールが、1秒よりも短い時間間隔でどんどん接近し、ついに融合して、太陽の60倍ぐらいの重さのブラックホールになった瞬間を捉えたということです。最初、ニュースだけを聞いていますと、それほど迫力はないのですけれども、実際にそのデータをみてみると、本当に美しいデータです。

重力波は、そもそも非常に重たい物質が作る時空の歪みです。これはアインシュタインが一般相対性理論として発表したわけですけれども、この時空の歪みは、重たい物体が動きますと、それによって波となり、四方八方に宇宙空間に伝わっていきます。そのような、いわば時空の歪みの波なのです。これは理論的には非常にしっかりと予想されていて、間接的にはそのような波があるのだろうということはすでにわかっていました。

そして今回は、実際にレーザーを使って、非常な精密測度で時空の長さを測定したのです。アメリカの西海岸と東海岸に独立した装置が2基ありまして、ほぼ同時に、非常に似た波形を捉えています。しかも、多少の時間差があります。その時間差から、おおむね南の空、方向でいうとだいたいカメレオン座の方向に、おそらく発生源はあるということまでわかってきています。本当に胸のすくような、素晴らしい快挙だと思います。本当に拍手をしたいこの素晴らしいニュースに、私は感激しています。

さらに考察を深めると、天文学的に、このようなブラックホールが2個くるくる回りながら近づいてくる天体は、どのような天体なのだろうか、いったい我々がいま知っている天体のなかで、どのような部類に属するのだろうかということが気になります。つまり、実はブラックホール2個の起源の問題があるわけです。

これについては、記者発表ではあまり取り上げられていませんでしたけれども、私の研究の結果を使いますと、おそらく母天体は巨大な星団です。巨大な星団というのは、例えば太陽1万個分、あるいは10万個分という質量を持った、非常に稠密な星団です。このなかには、例えば太陽の数十倍の星が数十個、含まれているはずです。そのような星は超新星爆発を起こして、10倍、20倍、30倍という重さのブラックホールをどんどん作っていきます。しかも密度が高い、そのような巨大星団が、おそらくは今回、検出された連星ブラックホールの母天体であろうと私は想像しています。やがて、そのような母天体を含む銀河はこれだったのかということがわかってくるはずなのです。

ますます楽しみな、ことし、2016年です。ありがとうございました。

【キーワード】 研究・観測