アデレード大学への出張(2016年5月)
2016年5月度のビデオメッセージ
皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。
先月は、少し海外に、オーストラリアのアデレード大学に行きました。実は私達は長年、アデレード大学の研究者と共同研究を行っておりまして、かなり頻繁に交流しています。アデレード大学は、決して宇宙研究のグループが大きいわけではないのですが、宇宙研究と素粒子物理学の研究室が緊密に連携しながら、研究を進めているところです。
特に私達が緊密に研究している相手は、ガンマ線天文学のグループです。Gavin Rowellさんという方、プラス、ポスドク、あるいは大学院生の方々と共同研究を行っています。私達は宇宙のガス、星間物質の研究をしていますが、この星間物質には実は非常にエネルギーの高い宇宙線が衝突していて、宇宙線と水素ガスの反応によってガンマ線が出てきます。ですから、一見、ガンマ線は非常にエネルギーの高い現象で、冷たい星間ガスとは無関係のように思われますが、実は両者は非常に緊密に関係しています。そのことが、この10年間の私達の共同研究によって、非常にはっきりとみえてきております。
これからCTA(Cherenkov Telescope Array)と呼ばれているガンマ線望遠鏡も作られていきますので、ますますこれからの発展が楽しみな分野です。非常にエネルギーの高い粒子の研究は、パラメーターの、物理量の範囲が非常に広いですから、実は難しさもありますが、そこを一歩一歩解決していくという意味で、大変大事な研究だと思っています。そこから宇宙線の起源がみえてくるのです。大変成果が期待できます。
そのような話をアデレードでしておりまして、帰路、シドニーから日本の飛行機に乗って成田に帰るはずでした。ところが、ちょうどその日、成田空港の辺りが大変な強風に見舞われまして、急にパイロットが機内アナウンスで「飛行機は着陸できません」と言い出しました。「急きょ、関西空港にいったん着陸します」というアナウンスがなされ、これはやむを得ないのですが、日本の乗客の方は本当に大人しいですよね、誰も騒がずに、みんなで関空に行きました。そして、関空で降りるのかなと思ったのですが、全然、扉は開きません。実はパイロットには降りる気がなかったようで、2時間ぐらいしたところで「また成田に戻ります。そのために給油をしています」と言い出しました。誰一人、関空では降りずに、給油が終わり、無事、離陸して、そのまま成田に着きました。
そうすると、もう夜の10時半でした。成田空港は大変ごった返しておりまして、タクシー乗り場には日本人、外国人が入り乱れて、ものすごい長蛇の列になっていました。ホテルもすべて満杯で、私はちょうど名古屋の乗継便があったのですが、もう万事休す、どうしようもないのです。
意を決して、成田空港で一晩、夜を明かすことにいたしました。わずかにJALのカウンターで、ストローを使って息で膨らませてフラットにするエアーマットレスとペットボトルの水一本を貰って、寝る場所を成田空港で探しました。幸い、レストランの影に割と静かな場所がありましたので、そこにマットレスを敷いて、5、6時間、寝ました。初めての経験でしたが、一応、体を伸ばして寝ることができましたので、それほどの不快感はありませんでした。ただ、日本航空は乗り継ぎの客がそのようなことになることを重々承知していたはずなのですが、一切、声もかけられませんでした。
その翌日、朝10時の飛行機で無事に、一日遅れで名古屋に戻ってまいりました。振り返ると、まあ、大変な目にあったなという先月でございました。
どうも皆さん、ありがとうございました。