世界一の大望遠鏡「ALMA」(2016年9月)

2016年9月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお届けしたいと思います。

きょうは、ALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)のお話をしたいと思います。ALMAは“A・L・M・A”とアルファベットで書きまして、南米のチリ、アンデス山脈の標高5000mぐらいのところにある、非常に壮大な、世界一の大望遠鏡です。ただし、光の望遠鏡ではなくて、電波で宇宙をみる、巨大な電波望遠鏡です。全部で60台を超える口径10mぐらいのアンテナがありまして、それを組み合わせて非常にパワフルな宇宙の観測ができます。特に得意としているのは、まだ星になる前のガス、あるいは塵、そういった宇宙の物体から出てくる電磁波、電波を捉えることです。しかも、大変高い空間分解能で詳しくみることができる装置です。

日本も昔からこのALMA計画に参加しておりまして、私自身も1997、8年頃から計画の実現のために、ささやかながらいろいろと力を尽くしてきました。実は2004年にALMA望遠鏡の予算が日本で認められまして、300億円弱の予算をALMA計画の一部として執行することになりました。

そして、その頃、まだまだ望遠鏡は形になっていないのですが、「ぜひ日本国民、納税者の方々にこの計画の意味を伝えよう」ということで、私が監修いたしまして、ALMA計画を説明、解説する本を一冊出しました。『私たちは暗黒宇宙から生まれた ALMAが解き明かす宇宙の全貌』というタイトルで、日本評論社という出版社から出版いたしました。いま読み返してみても、それほど中身は古くなっていません。宇宙の研究にどうALMAが役に立ちそうかということを解説しています。

そして、実は今月、2016年9月に、その最初のALMAの本を受けまして、新しいスーパー望遠鏡ALMAの最初の3年間分ぐらいの観測成果をまとめた本を、やはり日本評論社から出版いたしました。思い起こすと、最初の本が出版されたのは2004年ですので、12年を経たわけです。12年を経て、実際にALMA望遠鏡が3年以上動き続けて、大変驚くべき宇宙の姿が、例えば惑星はどうやってできるのか、あるいはマゼラン雲、巨大な星が分子雲と分子雲の衝突によって生まれている様子が、手に取るように非常に詳しくみえてきています。

実は電波望遠鏡の寿命は結構長いのです。光の望遠鏡もそうなのですが、その辺りが5年程度でどんどん更新していかなければいけない、例えば素粒子物理学の世界の加速器とは少し性質が違います。宇宙の研究の歴史は、少なくとも数百年の歴史があり、そのなかで、例えば50年経っても十分に息の長い宇宙研究が行われるという世界です。ですから、ALMA望遠鏡は2013年に開所式を迎えたのですが、まだこれから20年、30年、第一線の装置として活躍を続けるはずです。

そのようなALMA望遠鏡の新しい成果を皆さんにお伝えしたいということで、いまのところ9月7日に日本評論社から発売されることになっていますが、私も含めて全部で5人の天文学者が、それぞれの担当セクションを書いて一冊にまとめていますので、ぜひ書店等で手に取っていただいてはいかがと思います。

ありがとうございました。

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