月(2015年11月)

2015年11月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

だんだん気温も下がり、一歩一歩、秋が深まっている感じがいたします。このような日、夜に空を見上げますと。月が煌々と光っています。その光の何ともいえない美しさといいますか、静けさを感じることが増えているのではないでしょうか。特に、ここひと月、月の見かけの大きさが大きくみえています。月の軌道も円からかなりずれていますので、月は地球に近づいたり、あるいは遠ざかったりしています。それによって月の大きさも見かけ上、意外と大きく変動しているわけです。

実は月は、地球の大きさに比べると、衛星としては群を抜いて大きい衛星です。普通、衛星はもっと小さいわけですが、月の場合、地球の大きさの4分の1ぐらいということで、異様に大きな衛星なのです。

その原因は、いろいろ議論されてきましたが、現時点では、地球ができた直後ぐらいに大きめの微惑星が地球に衝突し、それが粉々に砕けて地球の周りを輪っかのように取り巻き、そのなかでまた新たに重力で固まった塊が月ではないかということが、月の形成の一つの定説になっています。それ以外にも、いろいろな説があったのですが、なかなか月の性質をうまく説明することができませんでした。そのようにして誕生した月なのですが、ばらばらになってから月が形成されるまでは、おおむね1カ月ぐらいで、月は大変急激に固まったと考えられています。

ここで一つ不思議なことは、そのように誕生した月は、実は誕生直後、地球に非常に近かったのです。例えば地球を1cmのボールにしますと、いま月の位置はだいたい30cmぐらいのところです。1cmの地球に対して30cmぐらいの辺りに月があるわけです。ところが、生まれた当初、月はこの辺りにありました。ですから、過去四十何億年の間に、月はこの辺りからこの辺りまで移動しています。そして、実はいまも1年に4cmずつぐらいの割合で、月はどんどん地球から遠ざかっていることがわかっています。

これは実は地球の重力の影響です。月が地球に重力を及ぼして潮の満ち引きを引き起こし、この潮の満ち引きでできた重力の歪みが、月の運動を加速しています。その結果、月は地球からどんどんエネルギーをもらって遠ざかり、一方、地球は月にエネルギーを与えていますので、実はどんどん自転のスピードが遅くなってきています。ですから、地球の1日はどんどん延び、どんどんといってもゆっくりですが、月はどんどん地球から遠ざかるということが、現在、起きています。この遠ざかり方ですが、最初の頃、この辺りでは非常に速かったのです。非常に急速に月は遠ざかっていました。この辺りから割とゆっくりと、いまの4cmに近い割合で遠ざかっています。

例えば日食等を考えてみますと、現在、月の大きさは見かけ上、ほとんど太陽の大きさと同じになっています。皆既日食、あるいは金環日食ということで、月の大きさは微妙に変わっている、大きくなったり小さくなったりしていますが、基本的に太陽と同じぐらいの大きさであるということは変わりません。

月という非常に身近な天体は、考えてみますと、実はいろいろ奥が深いのです。いま我々が知らない月の性質も、まだまだたくさん残されていると思います。またあらためて月の面白い性質について、ご紹介できればと思います。

今月のメッセージとさせていただきます。ありがとうございました。

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