今年の抱負 :様々な波長帯の観測研究に期待(2014年1月)

2014年1月度のビデオメッセージ

皆さん、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。年頭にあたりまして、ことしに臨む抱負を少しお話ししようかと思います。

昨年暮れまでのいろいろな研究の流れをみておりますと、非常に驚くことが実は少なくありません。昨年一年間も、最新の装置による素晴らしい観測データ、そしてそれを用いた思いがけない宇宙の姿がいろいろみえてきました。

一つ、二つ例を挙げてみますと、やはり重要なものはALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)望遠鏡ではないかと思います。ALMA望遠鏡は、大変良い感度で、宇宙の姿を、宇宙の冷たいガスの詳しい姿を、いままでよりも1桁以上の詳しさで、場合によっては2桁ジャンプしたとみられることもありますが、大変克明に私達に伝えてくれています。

その最新の結果をみますと、従来、例えば教科書に書いてあったことを大きく覆すような、非常に新鮮で驚きに満ちた宇宙の姿がみえてきます。例えば太陽系の形成の問題は非常に古典的な問題であり、1990年頃、20年以上前に、すでに基本的な理論の枠組みは作られています。ただ、新しいALMAのデータをみると、非常に奇妙な、従来のクラシックな理論ではとても理解できない、説明できない変なガスの分布がどんどんみえてきました。理論も含めて、星の形成、太陽系の形成の問題については、かなり大きな考え直しが迫られているのではないかという気がしております。

また、同時にいろいろな波長帯の、ALMA以外の、電波以外の観測波長でも、どんどん素晴らしい観測結果が出てきています。ことしは、おそらく波長をまたがる、斬新な研究のスタイルが、さらに加速する年になるのではないかと思っております。特に私が期待していることの一つは、エネルギーの高い、例えばX線やガンマ線といった波長での観測研究と、エネルギーの低い星間物質、例えば水素の原子ガス、あるいは水素の分子ガスの観測研究を組み合わせて、非常に高い視点から宇宙のあり方を解き明かしていく年になるのではないかということです。

現在、私もそのような研究の真っただ中にいます。日々、非常に驚きを感じながら研究し、学生諸君と一緒に論文を書いています。そこで頭をひねって謎が解けてくると、非常に大きな感激、感動を共に分かちながら前に進んでいけます。そのようないまを過ごしております。

月ごとに進んでいく研究のなかで、さらにことし一年、何回か、皆さんにも新しい宇宙のお驚きをお伝えできる機会があればと考えています。

ありがとうございました。

【キーワード】 研究・観測電波望遠鏡