巨大星誕生の新しい発見(2014年2月)

2014年2月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

きょうは、私がいつも宇宙物理学の講義をしている物理学教室の講義室からお話ししています。最近、1月24日、本当に最近のことなのですけれども、あるきっかけで新しい発見、大変良い発見をすることができましたので、早速、そのお話をお伝えしたいと思います。

このメッセージでも何回か、星ができるということについてお話ししてまいりましたけれども、そのなかで一番大きな謎の一つは、宇宙には太陽の100倍、120倍、あるいは130倍という大変重たい巨大な星が存在して輝いています。このような巨大な星は非常に寿命が短く、わずか百万年、数百万年というタイムスケールで進化して、その一生を終え、超新星爆発で消えていくと考えられていますが、問題は、この太陽の100倍を超える重たい星がどうやってできるのかということです。ここ10年ないし20年にわたって、いろいろな案が出され、世界の数千人、あるいは数万人の研究者を巻き込んだ大きな論争になっていましたが、いまだに公式にはこの巨大星の誕生の仕組みは解決されていないことになっています。

そして、実は数年前から我々は、ガス雲同士の衝突が引き金になって巨大な星ができているのではないかということを、観測に基づいて提案してきていまして、1月24日、それがさらに確かだと考えられる新しい証拠をみつけました。これは銀河系の中心方向よりも、我々から北を上にしてみると少し右側の方向、いて座の方向に、数カ所、巨大な星が群がって存在している非常に不思議な領域があります。この部分の詳しいガス雲の分布を、思い立って調べてみました。その結果が24日に出てきました。

そうすると、見事に2つの雲が衝突しています。しかも、普通は数光年以内、1光年よりももっと小さなスケールで巨大星が集中して生まれている様子が3例ほどみつかってきているのですが、今回の発見の大きなところは、大きな質量の星ができているところが1個の真珠だとすると、ちょうど真珠のネックレスのように分子ガス雲が伸びて、そこに点々と、まさに真珠の粒のように巨大星が群がって誕生していて、400光年、500光年という非常に長いスケールにわたって、夥しい数の巨大星ができてきていることがみえてきたことです。これは銀河系のスケールで、衝突が非常に重要な役割を果たしていて、しかもそれが極めて頻繁に、ごく当たり前のように起きていることを意味しています。

なぜこのようなことがわからなかったのか、これはある意味、非常に自然な帰結です。人々は広い範囲をみることを忘れています。巨大な星が生まれると、そのスポットにどんどん視野を定めて詳しくみていこうとする習性が、人間にはあります。しかし、鍵は実は大きな視野にあったと私は考えます。非常に広い視野を、いわば我々の守備範囲、研究範囲、対象として取り上げ、巨大なガス雲において個々の巨大星がどう位置付けられているのかということに目を向けることによって、初めてこの謎が解けました。

そして、2月1日に名古屋、2月15日に金沢で、恒例の「南天に広がれ宇宙ロマン」という講演会の20回目が行われます。そこで最新の成果について皆さんにお伝えできると思います。

ありがとうございました。

【キーワード】 天体研究・観測