落語を楽しむ(2013年2月)
2013年2月度のビデオメッセージ
皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。
毎回、このようにお話ししますが、どちらかというと学問の話や比較的硬い話が多いので、たまにはもう少し普通の柔らかい話をしてもいいのではないかと思いました。
一頃、ずいぶん落語が好きで、自宅に落語のCDを数十枚置いておりまして、ずっと飽きずに何時間も聞いていることが少なくありませんでした。本当に落語は面白く、新作も含めて、素晴らしい日本の話芸の世界、宇宙だという気がいたします。
面白い落語はいろいろありますけれども、やはり何回聞いても面白く楽しいのは『死神』というお話です。ついこの間、NHKのテレビで立川談志師匠の『死神』をやっておりまして、やはり素晴らしかったです。本当に何度聞いても飽きない、間の取り方と話術によって作り出す空気は、本当に素晴らしいと思います。ただ、談志師匠に追いつき、追い越す人はなかなか出てこないようで、芸の世界は本当に極めるのが難しいのだなという気がいたします。そのような意味では、学者、研究者の世界も、多少はそれに通じるところがあり、ものを創造していく人間の頭脳の力は、本当に不思議な、また謎に満ちたものだという気がいたします。
もう一つ、いま思い出しましたが、私の好きな落語に『雛鍔』があります。これも面白い話で、四角い穴が開いているお金を子供が拾います。「これは、はて、なにかしら?」という一段が出てまいりまして、そのお子さんは「これは穴が開いている。しかも小さくて丸い。お雛様の刀の鍔ではないかしら?」という見立てをします。それで『雛鍔』といいます。つまり、お金を普段の生活で使わない身分の、高尚なお家のお子様ということで、これが活きてくるのですね。
鍔といいますと、私も昔、骨董屋さんに行って、一つだけ高い買い物をいたしました。金沢だったと思いますが、金沢にも良い骨董屋さんが何軒かあり、本当は銀座や京都が良いと思いますけれども、たまたま金沢で刀の鍔を買いまし
た。ときどき出してみてみると、なかなか良いものですね。やはりそれなりの値がするものは、細工に大変心がこもっていて、また模様が鮮明です。実はその刀の鍔は、重さ、大きさがちょうど適当なものですから、主にペーパーウェイトとしてしか使っておりませんけれども、私の持つささやかな宝物の一つでございます。
それでは、きょうはこの辺りで、ありがとうございました。