固定観念の壁に立ち向かう(2013年5月)

2013年5月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

きょうは人間の思い込みといいますか、固定概念、固定観念の怖さについて、日頃の思いをお伝えしたいと思います。

人間の活動のなかには、いろいろな固定観念があり、これが柔軟な思考を妨げ、真実を見出すことを阻害するケースは、ままあるのではないかという気がします。学問の世界もその例外ではありません。例えば天文学についていいますと、ある影響力のある研究者が一つの考え方を論文として発表すると、その論文は大変魅力的で合理的にみえることがあります。ところが、よくよく調べてみると、それを裏付ける観測結果はあまりなかったり、あるいはあるところから先は非常に曖昧だったりします。そのような場合が実は少なくないのではないかと考えております。いかにそのような固定観念から解放されて、観測結果を虚心にみつめ、そこから本当の真実を抜き出していけるか、そのような研究が非常に大事だと思います。

例えば私達の研究グループは、ここ数年、星間ガス同士が、ガスの雲とガスの雲が衝突することによって、非常に巨大な星、あるいは巨大な星団が誕生するということをいくつか発見し、このような雲衝突が星形成の非常に重要な機構であるということを指摘していますが、現在、抵抗も非常に強いのです。従来の固定観念、既成概念に照らすと、衝突が重要な役割を果たしているということは、どのテキストにも一行も書かれていません。ですから、私達はこれからテキストを書き換えていく作業に取り組んでいるのだと考えています。

固定観念の壁は非常に厚いものですが、やはり学問をさらに進めていく、そして宇宙に対する理解を一層より良いものにしていくためには、既成の壁に敢然と立ち向かっていく作業が欠かせないのではないかと考えている次第です。

どうもありがとうございました。

【キーワード】 意見・エピソード研究・観測