プレゼンテーション力を鍛える(2013年8月)

2013年8月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

先日、依頼されまして、大学院生を相手に、プレゼンテーションの仕方について、90分の講義を行いました。そのなかで一つ、私の体験を皆さんに聞いてもらいました。それは英語のプレゼンテーションの、いってみればトレーニングの仕方です。

特に駆け出しの研究者にとっては、なかなか人前で、あるいは研究会等で、多数の聴衆に英語で話を聞いてもらう機会はあまりありません。口頭発表の機会は、たいてい名前の通った研究者がほぼ占めてしまいますので、若者にはなかなかそのチャンスが回ってきません。ですから、勢い、英語で話をするという練習がやりにくいのです。

私も若い頃、そのような不満を持っておりまして、何とか解決する道はないかと考え、アメリカ天文学会で発表するということを一つ考えつきました。アメリカ天文学会は、ある意味、大変オープンな学会でありまして、申し込むと必ず誰でも発表することができます。持ち時間は1人10分です。発表に5分、質疑応答に5分、合わせて10分間が1人の持ち時間です。

実際に発表してみますと、自分の研究を5分にまとめることは、実に大変な作業でした。一つ一つの言葉、センテンスを大切にして、いかに無駄なく文章を構成し、自分の研究内容を伝えるかという大変良い練習ができます。

それと同時に、5分の質疑応答も大変有効です。考えようによっては「10分間、一方的に話してしまえばいいのではないか」と思われるかもしれませんが、同じ内容でも質問に答える形で説明する場合と単に一方的にスピーカーが話す場合を比較しますと、実は質疑応答に答えて話すほうが、はるかに生き生きと、よく内容が伝わります。これは不思議なものですが、やってみるとわかります。

この練習を、私は年に2回のアメリカ天文学会で、5、6回行いました。その後は本当に頭の中がよく整理され、英語の講演等で原稿を用意することは、全くといっていいほどなくなりました。ほぼリアルタイムで、頭から湧いてくることをお話しします。時間的にも、5分でもいいし、50分、あるいは90分の講演でも自由にお話しできます。そのような力が、お蔭で身に付いたのではないかと思っています。

現在の研究者にとって、英語、あるいは日本語によるプレゼンテーションの力は無視できない、本当に大事な力だと思います。

ありがとうございました。

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