「福井教室」100回目を迎えるにあたって(2013年11月)

2013年11月度のビデオメッセージ

皆さん、こんにちは。今月のメッセージをお伝えしたいと思います。

今月、11月9日にある催しを企画しています。私は年に何十回か、一般の方向けのレクチャー、講演を行っておりまして、そのなかに「福井教室」と呼んでいるものがあります。これは天文学の基本的な事柄について、例えば計算問題も交えて、一般の方々に大学の教室を利用してレクチャーを行っております。最近は土曜日の午後2時から4時まで、2時間にわたって「福井教室」を実行しています。ちょうど今月11月に数えて100回目を迎え、その記念ということで、名古屋市科学館のご協力も得て、科学館の会場で講演を行います。その後、参加された方々にプラネタリウムをみていただいて、科学館の協力のもと、100回目記念をさせていただくという企画です。

手元に最初の頃の講義録を持ってまいりました。読んでみましょう。第1回が平成9年の10月17日、名古屋大学5階の講義室にて、と書いてあります。第1回は「宇宙にはどんな天体があるのだろうか?」というテーマでお話をしています。内容をみていきますと、例えば「地球の大きさはどれぐらいなのか?」「月は、どれぐらいのサイズで、どれぐらいの距離にあるのか?」ということから始めて、いろいろな小惑星の大きさや分布、あるいは形状の説明をしています。

それから、2ページ目に、実際に黒板を使って書いておりますので、黒板にどのような絵を描いたのかという当時の板書のメモを、受講された生徒さんのお一人が、まとめてくださっています。これはコピーなのですが、もともとはもちろん手書きでありまして、大変熱心に、すべて読みやすいきれいな字で書いてくださっています。

この1回目から、すでに計算問題が出てきています。例えばいろいろな天体の距離、あるいは天体のサイズはcm単位ではどれぐらいの大きさになるのかということをまとめています。最後の計算問題では、「万有引力の強さを計算しましょう」ということで、M1、M2という2つの重さを持った物体がある距離に置かれているとき、この2つの物体の間に働く万有引力の強さがどれぐらいなのかということを、少なくともどの程度の桁になるのかということを、こちらで計算しています。これが最初の「福井教室」での計算問題ということになっています

このような教室を通して、私が皆さんに一つお伝えしたいと思っていることは、やはり宇宙の理解は、それなりの物理学に根差した、きちんとした筋道があり、しかもその根拠は観測、あるいは実験で非常に入念に確かめられているわけです。そのようなものに基づいて、人類は宇宙を考えてきたのだということを、身を持って味わっていただく時間にしたいと願って、99回、先月まで続けてきました。100回記念では、このような教室の過去の歴史も少しご紹介しながら、さらに深く、私達人類が宇宙をどう引き寄せ、理解しているのかということをお伝えしたいと思っています。

この100回の間の皆さんのいろいろなご意見、あるいは反応によって、私も鍛えていただきました。そのような場になっています。決して、一方的に研究者がお話しするだけではなくて、聞いてくださっている皆さんの表情、あるいは質問が、逆に研究者を育ててくださっているということをひしひしと感じながら、100回記念を迎えたいと思っています。

ありがとうございました。

【キーワード】 情報発信